カスハラに関する判例から学ぶ|対策を講じた企業が守られる意義
NHKサービスセンター事件(東京高裁 令和4年11月22日判決)などを手がかりに、カスハラをめぐる裁判例が示す考え方と、対策を講じておくことが企業にとって持つ意義を解説します。
カスハラ対策を経営として考えるとき、参考になるのが裁判例です。カスハラそのものを直接規定する単独の法律がこれまで乏しかった中でも、裁判所は既存の法理を通じて、従業員を守る企業の責任や、悪質な顧客の行為の違法性を判断してきました。本記事では、代表的な裁判例を手がかりに、対策を講じておくことの意義を考えます。
なお、裁判例の評価は事案ごとの事実関係によります。以下は一般的な理解を示すものであり、個別の判断は専門家にご確認ください。
企業には従業員を守る責任がある
労働契約においては、使用者は労働者の生命・身体等の安全に配慮する義務(安全配慮義務)を負うと一般に理解されています。顧客からの著しい迷惑行為によって従業員が心身の健康を害した場合、企業が適切な措置を怠っていたと評価されれば、企業側の責任が問われる可能性があります。
つまり、カスハラ対策は「従業員のため」であると同時に、「企業自身を守るため」でもあります。方針の明確化、相談窓口、対応マニュアルといった体制を整えておくことは、万一の際に「必要な措置を講じていた」と示す土台になります。
NHKサービスセンター事件
カスハラをめぐって参照されることの多い裁判例として、NHKサービスセンター事件(東京高裁 令和4年11月22日判決)が挙げられます。この事件は、コールセンター業務に従事していた労働者が、顧客等からの言動に関連して体調を崩したことなどをめぐって争われたものとされています。
この種の事案では、顧客対応の現場において、企業が従業員をどのように保護すべきかという視点が問題となります。裁判例は、企業に対し、過度な顧客対応の負担から従業員を守る体制づくりの重要性を示唆するものとして受け止められています。判決の具体的な結論や射程は事案に即して理解する必要がありますので、詳細は一次情報や専門家の解説をご確認ください。
裁判例から読み取れる実務のポイント
裁判例の積み重ねから、実務上は次のような点が重要だと考えられます。
- 記録を残す:いつ・誰から・どのような行為があり、どう対応したかを記録しておく
- 組織で対応する:一次対応者に判断と負担を集中させない
- エスカレーションの基準を持つ:悪質化した場合に上長・専門部署・警察等につなぐ
- 被害者をケアする:心身の不調に早期に気づき、配慮する
- 方針・マニュアルを整備する:対応が場当たりにならないようにする
これらは、いずれもカスハラ対策の基本的な体制整備と重なります。
なぜ「対策を講じた企業」が守られるのか
- 適切な措置を講じていたことは、安全配慮義務を尽くしたと評価される方向に働きうる
- 記録が残っていれば、悪質な要求の不当性を客観的に示しやすい
- 対応の型があれば、担当者が萎縮せず毅然と対応できる
対策は「トラブルが起きてから」では間に合いません。平時からの備えが、いざという時に企業と従業員の双方を守ります。
備えを仕組みにする
裁判例が示すのは、「従業員を守る体制を持つこと」の重要性です。弊社のカスハラ対策プラットフォーム「カスハラ」では、インシデントの記録・管理、対応マニュアルの整備、応対スクリプト、法的根拠ライブラリを一つにまとめ、いざという時に「必要な措置を講じていた」と示せる備えを支援します。
まずは無料のカスハラ対策診断で、自社の備えの状況を確認してみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。制度の内容・施行時期・要件は改正や運用により変わることがあります。実際のご対応にあたっては、必ず厚生労働省・東京都などの公表する最新の一次情報や、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。