大阪市がカスハラ市民を提訴へ|電話548回・面談93回、対応時間を給与相当額約40万円として賠償請求。企業が学ぶ3つの点
大阪市が600回を超える電話・面談要求を繰り返した市民に対し、差し止めと約40万円の損害賠償を求めて提訴する方針だと2026年9月15日に報じられました。提訴を可能にした記録、対応時間の金額換算、組織としての対応という3つの視点から、中小企業が学べるポイントと、同じ状況になったときの流れを整理します。
大阪市が、市の職員に対して600回を超える電話や面談での要求を繰り返した市民を相手取り、損害賠償と行為の差し止めを求めて提訴する方針を固めたと、2026年9月15日に朝日新聞が報じました。カスハラをめぐって行政が加害者を訴える例は珍しく、企業の現場にとっても「組織はどこまで対抗できるのか」「そのために何が要るのか」を考える材料になります。本記事では報道の要点を整理し、企業が学べるポイントを実務目線でまとめます。
報道の要点
朝日新聞(2026年9月15日配信)によると、概要は次のとおりです。
- 経緯:記録が残る2023年5月から2026年6月にかけて、男性は市立プールの設備の不具合や施設の汚れなどについて、複数の部署に説明や謝罪を繰り返し要求した
- 対応回数:電話対応が548回、面談対応が93回。合計で600回を超える
- 内容:職員に対する罵声もあったとされる
- 請求内容:面談の強要や長時間の電話の差し止めを求めるとともに、対応に要した職員の給与相当額として約40万円の賠償を請求
- 手続き:9月15日に開会する市議会に関連議案を提出し、可決されれば10月にも提訴する見込み
- 背景:市がカスハラで提訴するのは2022年以来。市は2025年に職員がカスハラを受けた場合の対応を定める基本方針を策定。事前の職員アンケートでは、約3割が過去3年間にカスハラを受けていた
企業が注目すべき3つの点
1. 提訴を可能にしたのは「記録」
548回、93回という数字が出せたのは、対応の記録が残っていたからです。日時、部署、要求内容、対応時間が積み上がっていなければ、「業務が妨害された」ことも「給与相当額約40万円」という損害額も示せません。差し止めを求めるにも、行為が繰り返されている事実を証明する必要があります。
企業でも同じです。カスハラへの対抗手段は、警察への相談、弁護士からの通知、取引の拒否、そして民事訴訟まで幅がありますが、どの手段も出発点は記録です。逆に言えば、記録がなければ「対応に困っている」以上のことは言えません。
2. 「対応時間」を損害として金額に換算した
今回の請求額は、対応に要した時間を職員の給与相当額に置き換えたものです。慰謝料ではなく、実際に失われた業務時間という考え方です。企業にとっては、カスハラ対応に何時間を使ったかを記録しておくことが、被害を客観的に示す材料になることを意味します。
「誰が、いつ、何分対応したか」を残す仕組みは、損害の算定だけでなく、従業員の負担の見える化や、対応者の交代・上長への引き継ぎの判断にも役立ちます。
3. 個人ではなく組織として対応した
大阪市は2025年に基本方針を策定し、職員アンケートで実態を把握したうえで、市議会の議決を経て提訴に進もうとしています。担当職員が個人で耐えるのではなく、方針を定め、組織として判断する流れです。
2026年10月1日に施行される改正労働施策総合推進法では、企業にもカスハラ防止のための措置が義務づけられます。方針の明確化、相談体制の整備、被害を受けた従業員への配慮、再発防止といった措置は、まさに「組織として対応する」ための土台です。大阪市の事例は、その土台があってはじめて、提訴のような強い手段も選べるようになることを示しています。
中小企業が同じ状況になったら
行政と企業では立場が異なりますが、企業が取り得る流れを一般的に整理すると次のようになります。
- 記録を残す:電話は録音、対面はその場のメモと直後の記録、メールやチャットは原文を保存する。対応時間も残す
- 対応窓口を一本化する:担当を一人にせず、責任者が受ける体制にする。要求の繰り返しが続く場合は、書面や特定の窓口に限定する
- 線引きを伝える:正当な指摘には対応する一方、要求の手段が不相当な場合は「これ以上は対応できない」と組織として伝える
- 外部に相談する:警察への相談、弁護士からの通知、必要に応じて差し止めや損害賠償の請求。判断は専門家と一緒に行う
どの段階でも、記録が揃っているかどうかで選べる手段が変わります。
三重県の条例案とあわせて読む
前日の2026年9月14日には、三重県が全国初の罰則付きカスハラ防止条例案を県議会に提出しています(詳しくは「[三重県が全国初の罰則付きカスハラ防止条例案を提出](/blog/mie-cushara-jorei-bassoku)」)。行政が加害者を止めに入る仕組みと、行政自身が加害者を訴える事例が、同じ週に続いた形です。企業にとっては、社会の側が「カスハラは組織で対抗するもの」という前提に動いていることの表れと言えます。
中小企業が1週間で整える方法
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。制度の内容・施行時期・要件は改正や運用により変わることがあります。実際のご対応にあたっては、必ず厚生労働省・東京都などの公表する最新の一次情報や、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。