カスタマーハラスメント対策の義務化とは|企業がいま準備すべきこと
改正労働施策総合推進法によりカスハラ対策が事業主の義務とされる方向です。義務化の背景、企業に求められる措置、いつまでに何を準備すべきかを中小企業向けにわかりやすく整理します。
カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)への対策は、これまで各企業の自主的な取り組みに委ねられてきました。しかし、法改正の流れを受けて、カスハラ対策は「やった方がよいこと」から「事業主が講じなければならないこと」へと位置づけが大きく変わろうとしています。本記事では、義務化の背景と、企業がいまから準備しておくべき事項を整理します。
カスハラ対策が義務化される背景
厚生労働省の各種調査などでは、顧客や取引先からの著しい迷惑行為(暴言・威圧・不当な要求など)を受けた経験のある労働者が相当数にのぼることが指摘されてきました。カスハラは従業員の心身の健康を損なうだけでなく、離職や採用難、サービス品質の低下といった形で企業経営そのものにも影響します。
こうした状況を背景に、2025年(令和7年)に改正された労働施策総合推進法において、カスハラ対策が事業主の措置義務として明確に位置づけられる方向となりました。すでに義務化されているパワーハラスメント防止措置と同様の枠組みで、顧客等からの著しい迷惑行為についても、企業が防止・対応の体制を整えることが求められる流れです。
なお、具体的な施行時期や、講ずべき措置の詳細は、今後の政省令・指針によって定められる部分があります。段階的に施行される見込みとされていますので、最新の公表情報を確認しながら準備を進めることが重要です。
事業主に求められると考えられる措置
パワハラ防止措置の枠組みを踏まえると、カスハラについても次のような対応が求められると考えられます。
- 方針の明確化と周知:カスハラを許さないという事業主の方針を定め、従業員に周知・啓発する
- 相談体制の整備:従業員が安心して相談できる窓口を設け、適切に対応する
- 被害を受けた従業員への配慮:メンタルケアや配置転換など、迅速かつ適切なフォローを行う
- 再発防止に向けた取り組み:事案を記録・分析し、マニュアルや研修に反映する
- 相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止
これらはあくまで一般的な整理であり、最終的に求められる措置の範囲は指針等で確認する必要があります。
いつまでに、何から始めるべきか
義務化に向けて、中小企業が優先的に着手したい準備は次のとおりです。
- 現状把握:過去にどのようなカスハラ事案があったかを洗い出し、リスクの高い場面を特定する
- 基本方針の策定:「カスハラには組織として毅然と対応する」という方針文書を用意する
- 対応マニュアルの整備:どこまでが正当な要求で、どこからがカスハラかの線引きと、現場の初動対応を定める
- 相談窓口の設置:社内または外部に相談先を用意し、従業員に告知する
- 研修の実施:管理職・現場担当者に対応の型を共有する
これらは一度に完成させる必要はありません。方針の策定と現状把握から着手し、マニュアル・窓口・研修へと段階的に広げていくのが現実的です。
中小企業がつまずきやすいポイント
- マニュアルを作っても現場に浸透せず、いざという時に使われない
- 相談窓口を設けたものの、担当者に対応ノウハウがなく形骸化する
- 記録の様式が定まっておらず、後から事案を振り返れない
いずれも「作って終わり」にせず、運用に乗せる工夫が必要です。
カスハラ対策を仕組みで支える
義務化への対応は、担当者の負担が大きくなりがちです。弊社が提供するカスハラ対策プラットフォーム「カスハラ」では、基本方針・対応マニュアルの作成支援、インシデントの記録・管理、応対スクリプトの生成、法的根拠ライブラリなどを一つの仕組みにまとめ、中小企業でも無理なく体制整備を進められるよう支援しています。
まずは自社の状況を把握するところから始めましょう。無料のカスハラ対策診断で、自社に不足している対応を確認できます。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。制度の内容・施行時期・要件は改正や運用により変わることがあります。実際のご対応にあたっては、必ず厚生労働省・東京都などの公表する最新の一次情報や、弁護士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。